わたしの、センセ

『どこにいるの? 僕がそこに行くから』

『先生が? 他の人に絶対、言わないですか?』

まいったな

僕は鎖骨を掻くと、「ふう」と息を吐いた

見つけたら、すぐに家に送ろうと思ってたのに

僕だって、プライベートの時間があるのにな

せっかく真央とゆっくりできると思ってたのに……

『わかった。誰にも言わないよ。だから教えて』

『学校。教室にいます』

僕はバイクのエンジンをかけると、学校に向けて走り出した

意外と近いところにいた

葉月さんをとっとと説得させて、家に送って……午前1時前にはアパートに戻りたいな

部活もあるし…あまり遅くなるのは御免だよ

僕は職員用の駐輪場にバイクを停めると、ヘルメットを二つとも置いて学校の中に入った

小走りで、廊下を進み、2-Cの教室のドアが静かに開けた

真っ暗な教室の隅で、肩や胸元の大きく開いたパーティドレスのようなワンピースを着て小さく蹲っている葉月さんがいた

「葉月さん」

僕の声に葉月さんの肩が大きく跳ね上がった

「僕は廊下にいるから、携帯でメールしよっか」

僕は、携帯の液晶を明るくした

がばっと顔をあげた葉月さんが、立ち上がると勢いよく僕に抱きついてきた

え? は?

「せ…センセ」

今にも消えてしまいそうな擦れた声で、葉月さんが僕を呼ぶと、わっと泣き出した

なに? どうして、泣いているんだ?

僕は、両手を持ち上げると、葉月さんの背中を撫でようとする

え? 素肌?

手に触れた感触は、葉月さんの体温が直に感じられた