わたしの、センセ

携帯の液晶を見て、僕は目を見開いた

『飯野主任』と表示されている

何かあったのだろうか?

部活で、怪我をした生徒はいなかったし、生徒が全員帰ったのを見届けてから、学校を後にした

他に何かあるとするなら、帰宅途中の生徒が事故にでもあったのだろうか?

それともゴールデンウィークで、ハメを外して補導されたとか?

布団から出た僕は、携帯を掴むと、耳にあてた

「もしもし? 松浦です」

『お疲れ様です。飯野です』

冷たい女性の声というのだろうか

主任の低い声が、聞こえてくる

「お疲れ様です」

『さきほど、校長から電話がありました。葉月さんが、まだ家に帰ってないそうです』

「え?」

『詳しいことはよくわからないのですが…教師たちにも探してほしいと』

「はあ…警察には?」

『知りません。とりえず、松浦先生も探してください。何があったらまたご連絡しますので』

「わかりました。探してみます」

探すっつってもどこをどう探せばいいのか…

一人で、出かけるような子じゃないだろう

下駄箱まで運転手がついてくるような家の子が、どうして……

僕は携帯を閉じると、脱ぎ散らかした下着に手を伸ばした

「ごめん。ちょっと出てくる」

「どうしたの?」

真央が不思議そうな顔をした

「僕の担当しているクラスの子が、家に帰ってないらしいんだ」

僕はテーブルの上に置いていある目ざまし時計の針を見つめた

もう11時だぞ?

何をしてるんだ