センセの指が、ぴくっと動いたような気がして、わたしは顔をあげた

「センセ?」

わたしの呼びかけに、センセの指がまた反応してくれる

動いたっ

センセ、私の声が聞こえてるんだね

わたしは涙を流しながら、微笑んだ

センセ、生きてる

意識があるよ

「センセ」

わたしの呼びかけに、センセの瞼がうっすらと持ち上がった

黒い瞳が、動くとわたしと目が合った

「センセっ!」

「さ…く、ら」

「センセ、良かったぁ」

わたしはぎゅっとセンセの手を握りしめた

さっきよりも、手に温かみがある

生きてる

センセ、生きてるんだね

「好きだよ…さくら。愛してる」

「うん。わたしもセンセが好き。だから独りにしないで」

センセが微笑むと、瞼を静かに閉じた

わたしの手を握っているセンセの指の力が、一気に抜けた



……センセ?





『わたしの、センセ』
           終わり