わたしの、センセ

三回目のコール音で、さくらの柔らかい優しい声が耳に響いた

ずっと聞きたかったさくらの声に、僕の心がじんわりと温かくなる

「さくら、迎えに来たよ」

僕は、白い教会を見上げながら、口にした

結婚なんてしないで

僕と一緒に行こう

僕はさくらを愛してる

さくらも、僕を愛しているよね?

『そっちに行ってもいい?』

さくらの質問に、僕は思わず嬉しくて顔が緩んだ

早く来て、さくら

「もちろん。待っているよ」

僕は、教会の屋根の上にある十字架を眺めた

神頼みって言葉はあまり好きじゃないけど…神様、ありがとう

青空に、ぽかんと浮かぶ十字架が、凄く眩しく見えた

僕はバイクに跨る

さくらが来たら、僕の新しいアパートに連れ行こう

僕が生まれ育った土地に借りたアパートなんだ

近くに僕が育った家があるんだよ

もう違う家族が住んでいるけど、ね

僕が高校生まで祖母と住んでいた家を見せてあげるよ

今にも壊れそうな家だったけどね