わたしの、センセ

―悠真side―

「…たく、やっと動いたか」

バイクで、式場の前に到着した僕に、門に寄りかかって立っていた勇人さんがニヤリと笑いかけてきた

「勇人さん?」

「このままお前が諦めるのかと思ったよ」

僕はふっと笑うと、首を左右に振った

「ええ。諦めようかと思ってました。さくらからメールが来なかったら、僕は一人で地元に帰ってましたよ」

「馬鹿だな。お前は、大馬鹿野郎だ。この俺が、お前側にいるのに…使わねえのかよ」

「毎回毎回、勇人さんにばかり甘えられませんよ」

「ほんと、お前は大馬鹿だ。甘えろよ。お前に足りないのは『権力』だ。あいつらに勝つために必要なのは『権力』だ」

「嫌な響きですよ、『ケンリョク』って」

僕は肩を持ち上げて、苦笑した

バイクに跨ったままの僕に、勇人さんが肩を組む

「お前になくても、お前の手持ちの札に最強の『権力』のカードがあるだろ。それを使えよ」

勇人さんが口元だけを緩めて微笑む

『俺を頼れ』と全身から、訴えてくる

ずるいなあ…勇人さんは、いつも良いところを総取りしていくんだから

格好良すぎですよ

男の僕ですら、惚れそうです

こんな男に憧れる

僕にも権力があれば…なんて無いモノねだりをしたくなるよ