わたしの、センセ

「桃香、これからどっか行くか?」

「え?」

桃香が驚いた顔をする…が、すぐに申し訳なさそうな顔をした

「ごめんなさん、勇人さん。あたし、病院に行かないと」

「は? 病院? 何で?」

「ん」

桃香の目が少し泳ぐ

なんだよ…俺に何を隠してるんだよっ

「桃香? 病気なのか。もしかしてこの前の貧血と何か関係が?」

桃香が、言い難そうに首をかしげた

寝室を別にするのが遅かったか?

無理させてたのか

有り得ないくらい、夜中に何度も電話かかってくるしな

海外の奴ら、少しはこっちの時間を考えろって思うけど…まあ、あいつらも勤務時間内に電話してきてるわけだし、文句は言えねえっていうか

はっと顔をあげた桃香が首を左右に振った

「違うんです。あの…病気じゃないですから」

慌てて、桃香が手を振る

「あの…実は、妊娠してて。だから今日は検診に…」

「妊娠?」

桃香の頬がぽっと赤くなった

「桃香、妊娠しているのか?」

「はい。ごめんなさい」

「何で、謝る?」

「だって…」

「謝る必要はねえだろ。そっか。俺も父親になるのかあ」

俺が父親かあ

なんか、想像できねえなあ

「産んでいいんですか?」

「はあ? 産むなっていうはずがないだろ」

俺と桃香の子だぞ?

嬉しいに決まってる