わたしの、センセ

式場の駐車場に行くと、車の前で桃香が立って待っていた

「桃香?」

俺は驚いて、早足で桃香に近づいた

どうしてここに?

ここに来ることは言ってないのに…

「クッキー焼いたんだけど、食べる?」

桃香が柔らかい笑みを見せてくれる

俺の心はそれだけで、温かくなる

桃香の肩を抱き寄せると、唇を重ねた

好きな人と、時間を共有する

同じ空間にいられる

それこそが至福だ

互いが、互いの心を欲しているのに、一緒にならないなんて拷問と同じ

松浦、お前も幸せになれよ

彼女が家のしがらみから、解放したんだ

絶対に離れるな

「あれ、今朝…アップルパイを焼いてなかったか?」

俺は、桃香から唇を離すと質問する

「アップルパイは松浦君にあげたの。今日、ここに来ると思ったから。私からのお餞別」

桃香が、恥ずかしそうに肩を持ち上げて笑う

「ああ?」

なんであいつにアップルパイをあげてんだよ

いらねえだろ

むしろあいつが、俺に礼をしろっつうんだよ

タダで、結婚式をぶっ壊したんだから!