わたしの、センセ

テーブルに肘をつくと、髪をくしゃくしゃに掻き毟った

「僕の生徒で、お金持ちのお嬢様で……婚約者までいるんだ。サイテーだな」

最初から、この手にしちゃいけない子だったのかな?

一線を越えないほうが良かったのかもしれない

どんなに好きになっても、最後まで生徒として接していれば良かったのか

「悠真…私がいるから。ずっと悠真のそばに…」

か細い声で、真央が呟いた

まだ恐怖の残る震える手で、僕の手首を掴むと、青白い顔で微笑んだ

「真央、気持ちだけ貰っておく。僕はまだ諦めない」

真央が寂しそうな顔をすると、下を向いた

それとも真央の言うとおり、僕は真央と一緒になったほうがいいのか?

いや、さくらが苦しむなんて耐えられない

なんでさくらが、好きでもない男と結婚させられなくちゃいけないんだ

「真央、やっぱり真央は両親のもとに帰るべきだ。ここにいたら、危険かもしれない」

「え?」

真央が捨てられた子犬のような目で、僕を見つめてきた

「ごめんな。真央を大切にしてくれる男を探したほうがいい」

僕は真央専用の引き出しを開けると、真央の鞄の中に荷物を入れ始めた

「僕もここを引き払うよ」

「悠真? 何を考えているの?」

僕は、真央ににっこりと笑うと「覚悟を決めただけ」と微笑んだ