わたしの、センセ

階段を駆け降りたところで、満足そうな顔をしている道隆さんが立っていた

「どうだった?」

「知らない」

わたしは道隆さんの横を通り過ぎると、スタスタと一人で歩き始める

道隆さんがわたしの手を掴むと、「エッチでもしてた?」と含み笑いを浮かべてきた

「離してっ。思い通りになって、満足でしょ。わたしがセンセと一緒にいることで、センセの周りの人に迷惑をかけるくらいなら、あなたと結婚します。だけど、わたしに触れないで。絶対に足を開かない。わたしは貴方に抱かれない」

わたしは携帯を出すと、家の執事に連絡した

運転手に迎えに来るように伝えると、センセのアパートの階段に座り込んだ

「さくら…俺が家まで送るよ」

「いやよ」

「未来の夫に冷たいなあ」

道隆さんがわたしの肩を抱こうとする

わたしはパチンと道隆さんの手の甲を思い切り叩いた

「やめて。触らないで。わたしの人生をあげるけど、わたしの心と身体はあげないわ」

「ふうん。じゃあ……心と体をあげたくなるように仕向けないとダメ?」

道隆さんがにやっと笑うと、わたしから離れていった

青い車に乗り込むと、低いマフラー音を鳴らして走りさって行った

何をするつもり?

まだ…何かするの?

やめて

センセに迷惑をかけたくないの

お願いだから

もう何もしないで