なに…それ

横取りなんて、言わないで

もともとわたしは、誰のモノでもなかったんだから

わたしは車から降りると、先生のアパートの階段をあがる

203号室のドアの前に立つと、震える指で呼び鈴を鳴らした

センセ…違うよね?

センセの話しているのが合ってるんだよね?

同棲なんてしてないよね?

別れたって言ってたもんね

お願い、センセ……わたしの不安を打ち消して

「はい?」

センセが少しドアを開けて、顔を出した

「せ…センセ」

わたしは擦れた声で、センセを呼んだ

泣きそうになる気持ちをぐっと抑え込んで、口角を持ち上げて笑顔を作った

「さくら?」

センセが驚いた顔をして、ドアを大きく開けてくれた

センセはまだスーツを着ていた

けど凄く乱れてる

ワイシャツのボタンがほとんと外れてて、胸の素肌が見えてた

いつもならアンダーシャツを着ているのに

まるで急いで羽織った…みたいなそんな感じ?

「センセ…嘘だよね?」

「え? 何が?」

センセが驚いたように目を大きく開く

髪を掻きあげて、センセはちらっと部屋の奥に目をやった

なんかセンセ、気まずそう?

わたし…来ちゃ、まずかった?