―さくらside―

パパが仕事のパーティに出席する前に、学校に行くと言い出した

2-Cの担任になった松浦先生と直接話ができなくて、苛々してるみたい

一言、文句を言いたいのに、全くつかまらない担任を一方的に恨んでる

新人教師は頼りにならないとか…俺から逃げてるとか…パパの頭の中で、松浦先生はひ弱で骨のない教師にされてる

勝手なパパの妄想で作り上げられた松浦先生を恨み、怒り…そして嫌ってる

パパは怒りだしたら、止まらない

新垣先生もそれで1時間とか2時間、パパに説教されてた

今回もきっとそれくらいかかるんだろうなあって思って、わたしは明日から通う教室を見に行った

車の中で、1時間も待たされるなんて嫌だから

校内を散歩しながら、教室を見て…それから学校の外にあるコンビニで雑誌を買って、車の中で読む

パパが戻ってくるまでの計画を立てながら、わたしは2-Cの教室に足を踏み入れた

すでに先客がいるなんて、思わなかった

しかもスーツを着ている長身の男性がいるなんて…わたしは驚いた

驚いて、心拍数が跳ね上がる

静かに教室を出るつもりだった

スーツの大きな背中を眺めながら、一歩二歩とさがり、廊下に足を出したつもりが、教室のドアに背中を激突させてしまった

まっすぐ後ろに下がったつもりだったのに、方向感覚がズレてたみたい

斜め後ろに下がり、開けっ放しになっているドアに背中をぶつけていた

窓際に立っている男性が振り返る

男性の切れ長の賢そうな目が見開くと、すぐに頬笑み変化した

「葉月さくらさん…だよね?」

もしかしてこの人が、松浦先生?

わたしの担任の先生?

180センチはありそうな長身に、細身ながらしっかりした身体つきが男らしさを物語っている

真新しいスーツが、まだ着慣れていないと訴えている

短髪の髪が綺麗に整えられてて、清潔感の漂う先生だった

名前を呼ばれたわたしは、先生に頷く