わたしの、センセ

「参ったな」

センセが苦笑すると、携帯をスーツのポケットから取り出した

「どうしたんですか?」

「いや…多分なんだけど。あの人が手を回してくれたのかも…。僕はダブルの部屋で予約を入れたんだけどね」

センセが携帯を耳にあてながら、わたしに説明をしてくれた

『ダブルの部屋』

センセのその言葉だけで、カッと身体が熱くなった

大きなベッドで、センセと一緒に寝られるのかもしれないって思うだけで、胸がドキドキしてしまう

「あ…勇人さん。悠真ですけど…」

センセがわたしに背を向けて、電話の相手を話しだした

携帯から漏れてくる声が、前にパパに婚約破棄を訴えてきた人の声と一緒だった

センセって、すごいなあ

人脈に長けているのかな?

きっと友人とかって沢山、いるんだろうなあ

「やっぱり」

携帯を切ったセンセが、ふうっと息を吐き出した

「センセ?」

「やっぱり勇人さんの仕業だった。このホテルって、小山内グループの傘下だったらしい」

センセが肩を竦めると、ベッドに座った

「明日の朝まで自由に使っていいってさ」

センセが諦めたように、わたしに言ってきた

わたしは窓際に立つと、最上階から見える綺麗な夜景を見つめた

街の明かりがまるで宝石のように輝いている

「シャワー、浴びてくるね。部活で汗をかいたから、さっぱりしたい」

センセの声が背後から聞こえてきた

「あ…はい」

わたしが振り返ると、センセがにっこりと笑ってベッドの上に大きな箱を置いた