わたしの、センセ

「お待たせ」

スーツ姿のセンセが、わたしの前に立つとにっこりと笑った

わたしは本を閉じると、椅子から立ち上がった

いつも学校で見ているスーツ姿だけど、なんだか今日はいつもより格好良く見えるなあ

どうしてだろう

わたしは鞄の中に本を仕舞って、もう一度センセの顔を見上げた

大好きなセンセの笑顔が、わたしに向けられている

センセの眼球に、わたしが映っている

センセの目にわたしがいる

センセがわたしを見てくれている…そう思うだけで、すごく嬉しくて、涙が出そうになった

「松浦様でございますか? お待ちしておりました」

支配人のネームバッチをつけている男性が、センセの横に立つと腰を折ってお辞儀をした

「は、はい…」

センセは驚いた顔で、支配人に視線を動かしていた

「オーナーの大切な御友人だと、うかがっております。どうぞ、お部屋へ。ご案内します」

支配人は、センセの荷物とわたしの荷物をすっと持ち上げると、歩き始めた

センセは不思議そうな顔をしたまま、わたしをちらっと見てから一緒に歩き出した

センセの手がわたしの手をそっと握ってくれる

センセの温もりに、わたしは恥ずかしくて顔が赤くなるのを感じた

支配人が、案内してくれた部屋は最上階のスィートルームだった

「えっ?」

センセが驚いて声をあげると、何かの間違いではないか?と支配人に何度も確認する

支配人は、「間違えておりませんよ」と笑顔で答えると、わたしたちを残して部屋を出て行った