――誰だ。
この部屋には、さっきやって来た、青い髪の彼しかいないはずなのに。
ぶるりと悪寒に背筋を震わせ、慌てて振り返る。
「!!」
「やあ」
振り向いた先、鼻が触れ合いそうな程間近には、これまた美形な顔があった。
プラチナの髪と同じ色の瞳。
20代後半を思わせる落ち着いた端正な顔に、ニコニコと笑顔を張り付かせている。
あまりの驚きに、私の身体がガチリと固まった。
「な、なぁんだ、アルフレド様じゃないですか! もー、ドコから入って来たんですか?」
どうやら、目の前の彼は少年の知り合いらしく、「驚かさないでくださいよー」と、あからさまに安心したような声を出す。
その声に、彼は美しい笑顔で
「さあ、どこかな? ドアからじゃないことは確かだけれど」
その言葉に、今度は少年がビシリと固まる音が聞こえたような、聞こえなかったような……。
この部屋には出入口が1つしかないのに、素敵な笑顔の彼は何処から来たというのだろうか…。
「色々と急な展開に、ついていけない。という表情をしているね」
「はぁ……」
そりゃそうだ。
マンホールの下は森だわ、落ちてきたはずの穴は消えてるわ、森を抜けたかと思ったら変な美形に殺されかけるわ……。
…今までの中で最も不運な一日だと思う。(しかも、現在進行系ときた)
「戸惑う気持ちは分かるよ。突然、知らない世界に連れて来られたんだからね」
「は…?」
おい、今この人「知らない世界に連れて来られた」って言わなかった?
「私が早く迎えに行ければよかったんだけれど、どうにも何処に落ちたか分からなくてね、苦労したよ。本当は私の屋敷に落とすハズだったのが…」
「ちょ、まって…!」
「なんだい?」
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