「恨むんなら、お前をココに差し向けた雇い主と、俺の庭に足を踏み入れた自分を恨むんだな」


にやり、と口角だけを上げた笑み。
その瞳には、獰猛な色が浮かぶ。

この男、本気だ。


「……っ!!」


瞬間、私の身体を本能的な恐怖が駆け抜けた。


やばい、本気でコロサレル。


――もうダメだ。
諦めに似た気持ちで目を閉じると、理不尽な状況に浮かんだ涙が頬を伝って零れる。

それと同時に、何かが爆発するような音が聞こえ、その衝撃音を聞きながら、私は保てなかった意識を暗闇に堕としたのだった。
























ぱち。


「、」


真っ暗な空間にいた意識が急に浮上して、目が覚めた。
もしかしたら、『目が覚めた』というには語弊があるかもしれないが。


何故なら、

(…私、生きてんの? 死んでんの?)

私はすでに、死んでいるのかもしれないから。




鈍重な動きで、もそりと柔らかな物から身体を起こし。
辺りを見回して呟いた。


「普通の部屋だ…」


いや、普通よりは数倍広い。
8帖ほどの私の自室より、3倍は広そうだ。

しかも、部屋に置かれている家具や調度品は、素人目から見ても高価そうな物ばかり。


「どうなってんの……」


いま、自分がいるのはキングサイズのベッドの上だ。
布団はふわふわで、触り心地もかなり良い。


「天国…じゃないよね……」


試しに、軽く自分の頬を抓ってみる。

(…痛い)

これは夢じゃない。
かといって、現実かも分からない。


いよいよ思考の波に飲み込まれそうになった時、扉をノックする音が部屋に響いた。


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