バンッと依夜の行く手を遮るように腕を伸ばす。
案の定、依夜は驚いたように俺の顔を見つめた。
「依夜、俺まだ怒ってるんだけど?」
「…まだ?」
依夜は眉間に思い切りしわを寄せてしつこいと言わんばかりに睨みつけてきた。
「北野くんはただ委員の仕事を全うしただけでしょ?太一にどうこう言われることなんでしてないじゃない」
あー。そういうこと言っちゃうんだ?
「…ムカつく。依夜のそういうところすげームカつく」
依夜には俺しか見て欲しくないのに、依夜は北野を庇うんだな?
「ん…っ…!!ちょ…離して…っ!!」
俺より少し低い位置にある頭を上に上げさせて、ただ唇を奪う。
汗臭い俺とは違って依夜からは石鹸の匂いがした。
「じゃあな」
放心する依夜を残して俺は保健室から自分の教室に戻っていった。



