車を二時間ほど走らせて、着いた場所はけっこうな山奥。
 クネクネな山道を何度も抜けて、どんどんと山へ山へと進んできた。
 すでに都会の「と」の字さえも感じられないくらいの田舎へとたどり着いた。

 一時間ほど前から道路は舗装されていなかったし、正直に言えば『日本にも、まだこんな場所が残ってるんだなー』というのが素直な感想だ。

 こんな場所に何の用事なんだろ?
「付き合って」と言ってたからには私に少なからず関係はあるんだろうけど。
 車を降りて、キョロキョロと周りを見るしかできない私。

 お母さんは車のトランクを漁り、ガサゴソと音を立てながら荷物を取り出している。
 小さめのリュックに、ステンレス製の細い杖、水筒。
 何だかハイキングに出発するような格好だ。

「ちょっと歩くけど、平気よね? 一応は……隼人の身体なわけだし」

 お母さんが少し心配そうな表情で聞いてくる。
 そんなに頼りなく見えるのだろうか?
 普通のハイキング程度ならば……大丈夫だと思う。

 まあ、学校行事のハイキングなんかは、いつも最後にはバテているけど何とか脱落したことは無いし。

――ハイ、多分……大丈夫と思います。

 とりあえず、あまり強気なことは言わずに頷くだけにしておく。
 隼人くんの体力がどれほどのモノかは知らないけど、
 女性のお母さんが登れるくらいの山なら問題ないかと……。