「お待たせいたしました」

 店員がテーブルにトレイを置く。
 テーブルに漂うチーズの良い香り。
 美味しそうだねえ。

 一口パクッっとかじりつく

……あれ?そんなに美味しく感じない?

 こんなにお腹が減ってるのに。
 なんて言うか……あっさりしすぎている、物足りない。
 そっか、隼人くんの味の好みがそのまま影響してるのか。
 これが……他人の感覚なんだねえ。

――改めて自分が奇妙な世界の中にいることを認識させられる。

 物足りなさを感じながら、チーズバーガーセットを一気に食べきる。
 十分ほどで完食し、コーラを飲みながら少しの間くつろぐ。
 店員に怪しまれない程度に粘った後、ようやく重い腰を上げる。

――さあ、本日の難関の一つ『帰宅』だ。

 重い足取りでバス停へ向かう。

――早く家に帰ってれば良かった。

 そう思う出来事にでくわすことになる。