満腹になって隼人くんの部屋のベッドに寝転ぶ。
 食べてすぐに寝ると牛になる――なんて言葉があるけれど、今の私には通用しない。
 なんたって他人の体だし、仮に太っても――その頃には私は恐らくこの世にいない。

 なんだかネガティブなんだかポジティブなんだか自分でも分からないような心境。

 とりあえず何もすることもなく、ただゴロゴロと転がっているだけの状況だ。

(おい、本当に今日はどうしたんだ?)

 そんな私の様子を見ていた隼人くんがいきなり話しかけてくる。

「何がぁ?」
(『何が』って、明らかにお前の言動がおかしいだろ。色んな人を内緒話って)
「色んな人じゃないじゃーん。真里とカズちゃんの二人だけじゃーん」

 とりあえずは軽くいなしておく。

 私が消えてしまうことを誰にも勘付かれたくないからこそしている『内緒話』なのだ。
 もしも気付かれてしまえば面倒なことになりかねない。

――私が消えるって分かったら……隼人くんは全力で阻止するでしょ?

 そういえば、カズちゃんは『私が消えるかもしれない』ことを隼人くんにもお母さんにも教えていないと言っていた。
 教えれば私が何かと困るだろう――そういう配慮をしてくれたようだ。
 もっとも、二人ともそれなりに勘は鋭いのでうっすらとは何か勘付いているようだけど――。

 隼人くんも私の様子が明らかに変わったことに対してそのような質問をしてきたのだろう。

――仕方ない。隼人くんと交わしておきたい『約束』も一つあるし。ちょっと相手してやるかぁ。