ちぇんじ☆

 私の曖昧な記憶は置いておいて……だ。
 カズちゃんが去った後に真里がすぐさま入れ替わるように戻って来た。

「ハァハァ……おまたせー!」

 息まで切らしちゃって、そんなにデートが待ちきれないか?
 わざわざ走って戻ってくるほどに!?

(ううん! 全然待ってないよ! 早かったねー!)

 真里の言葉に答えたのは隼人くん。
 さっきまでうずくまって涙目だったのはどこへやら。
 目をキラキラさせてまるで子供のようなはしゃぎっぷりだ。

――隼人くんって……好きな人の前だと露骨に素直な態度に変わるよね。

 初対面のときはクールな人だと思ってたんだけど。
 いや、実際にクールな面も多々あるけどね。
 何というか好きな人や自分が心を許してる人に対してはキャラが正反対になっている。

「じゃ、いこっか♪」

 真里がそう言いながら私の手を引っ張る。
 抗う術もなく、なすがままにズルズルと引っ張られる私。

――ああ、また昨日と同じ『孤独地獄』が始まるのか……。

 でも、『それもいいか』と思う自分もいたりする。
 私が『夢の存在』になる前に――この二人の仲の良い姿も記憶に留めておきたいから。
 ついでに真里に頼んでおきたい約束もこの機会にしておこう。
 きっと『元に戻る方法』を実行する前はバタバタしてそれどころじゃなくなるだろうしね。