ちぇんじ☆

「――分かった、じゃあ予防しとこうね?」

 そう言いながら、駅前の雑踏の中、勢いに任せて真里の肩を掴む。
 「ええ!?」という声にならないような小さい声を出して体を硬直させる真里。
 それに構うことなく真里の体を引き寄せる。

 男子高校生と女子高生、力の差は歴然だ。
 どれほど真里が抵抗してみせようと、みるみる内に二人の距離は縮まる。

「ちょ! こんな場所で何考えてるのよ!?」
(おい! 場所を考えろ!)

 真里と隼人くん、両者から私に向かって非難の声が飛び出す。
 それでも聞こえないフリをして行動を続ける。

 お互いの顔の距離が数センチまで縮まったとき――観念したように真里が瞳を閉じた。

(もっと人気の無い場所でやってくれー!)

 隼人くんの叫び声が聞こえる。
 そんな声は無視して顔を近づけ――コツッ!

 オデコを合わせた。

「ほえ?」

 目を開いてキョトンとしている真里。
 チラっと横を見ると隼人くんも呆気にとられている様子だ。

「キスしなくても、これで十分なんだってさ。頭、スッキリした?」

 顔を離しながら笑顔で真里に教えてあげる。
 私の言葉を受けて、自分のオデコを撫でながら「う、うん……」と少しうろたえた様子を見せる真里。

――二人とも見事に引っかかってやんの。