それから待つこと十五分、真里は「お待たせ~」というノンキな声と共にやって来た。
一言文句でも言ってやろう――そう思って振り返った瞬間、私は理解した。

――真里の遅刻の理由はバスの渋滞なんかじゃない、と。

こ、コイツ!!
慣れない化粧なんかしてて遅刻しやがった!

うっすらとファンデーション塗って、頬にチークまで差して、睫毛をカールさせてマスカラも使ってるな?
ああ~!そのリップは去年のクリスマスに『彼氏ができたら塗ってみよ♪』って言いながら買ったヤツだ!
せっかく使う日を楽しみにしてたのに勝手に使うなんて~~~!!!
髪型もいつもの三つ編みをほどいて内巻きにカールなんてさせちゃって!
一体ドコのお嬢様のつもりだよ!

眼鏡だけが相変わらずのまま、見た目に物凄く判りやすい変貌を遂げてきた。
おい!昨日までの腐女子魂はドコに行った?
スッピンこそが我らの誇りじゃなかったのかよ~!!

「あ……アンタ……その格好、何?」
「え? 普通の制服姿じゃない。何言ってるの?」
「いや……その顔」
「へ? 似合わないかな?」
「似合うとか似合わないじゃなくてさ――」

(すっごく可愛いと思うぜ!)

私と真里の掛け合いにいきなり割り込んできた隼人くん。
周囲の目を気にしてか、隼人くんに対して返事はしないもののお礼代わりのつもりなのかウィンクして微笑む。

――おい、キャラクターまで変わってないか?

と、言うか。
隼人くん、あんな格好でも良いの?
まるで別人じゃん!
しかも微妙に似合ってないよ?自分で言うのも何だけどさ。

――恋に落ちれば『アバタもエクボ』と言うけど……。