「ふーん、『カズさん』は寝たんだね。そういえば霊は? もう出ないの?」

 泣いてる間に『ラップ現象』は収まったようで、そういえばさっき洗面所に行くときも私の足音以外は聞こえないほどに静まり返っていた。
 カズちゃんが寄ってきてた霊を抑えたのかな?それとも朝になったから霊も引っ込んだ?
 まあ、どちらにせよ騒々しいのが終わったのは歓迎すべきことだ。

(もう朝だしな、それにカズさんの酔いも醒めたみたいだからしばらくは霊も寄ってこないんじゃね?)

 なるほど。
 それを聞いて安心した。
 ならば――私のすることは一つ。

「そ、じゃあ私もちょっと寝るね」

 時計をチラっと見たらまだ五時過ぎ。
 真里に会うのが八時過ぎくらいだから上手くすれば二時間は寝れる計算だ。
 一晩泣いて気分もスッキリしたし。
 顔を洗ったおかげか目の下のヒリヒリも治まってきていることだし。

(え? おい、寝るの? マジ? え??)

 隼人くんがそう言うより早く布団に潜り込む。
 悲しくて泣いてたから寝てなかったけど……実際は眠くて眠くて。

「七時になったら起こしてね♪ 朝ご飯もちゃんと食べたいし」

 今から眠れるもう一つの理由。
 それは確実に起こしてくれるであろう『目覚まし』がいるからだ。

――おやすみなさい。

 眠りに入る寸前に隼人くんの大きなため息が聞こえたような気がした――。