「おーい、朝じゃよー!」

 この夏休みの恒例だった『お祖父ちゃんの目覚ましボイス』で起こされる。

――ああ、このダミ声で起きるのも今日で最後なのかぁ。

 少し寂しいような、ホッとするようなそんな感覚のまま目をこする。
 と、同時に昨日の夢のことを思い出す。

――ふむむ……私ってひょっとしてカズちゃんに『恋』でもしてたかな?

 ずっと一緒に育ってきて、恋愛に近い感情は抱いていたんじゃないかとは思う。
 その昔、カズちゃんが幼稚園だった頃の「ぼくかすみおねーちゃんとけっこんするー」という言葉を真に受けてずっと彼氏を作らなかったという実績もあったりする。
 それでも、夢でああいう形でこの感情を実感させられるのは奇妙な感じだ。

 こんな風に考えるのはおかしいのかもしれないが、
 私がカズちゃんに恋するのはもう少し先、カズちゃんが今の私くらいの年齢になった頃だろうと思っていた。
 しかし、昨夜の夢を考えると私はすでにカズちゃんに恋していたようだ。

――さーて、恋してしまった相手でも見てもう一度この感情を確認してやりましょうかね。

 うん、私は自分が思っているよりも鈍いのかもしれない。
 こうやって横に寝ている人物を確認するまで自分の変化に気が付いてなかったのだから。

 まだ眠たい目をこすりながら見た隣に眠る人物は――私だった!