まあ、電話のことはひとまず……置いておけない!

 私が何日か泊まることをママに伝えるためだけに往復で四時間の山道を歩かせるって――。
 もうちょっと長くここに滞在したいのはヤマヤマなんだけどね。
 いっそ自分で山を下ってママに連絡を入れておこうか……?

「あの……私、自分で電話しに行きます!明日!」

 お祖父ちゃんの好意はありがたく思うけど、老人にあんなハードな道を自分のために 歩かせるわけにはいかない。
 一度は迷った道とはいえ自分で連絡しに行くのが妥当なところだろう。

……と腹を括ってたんだけど。

 お祖父ちゃんは私が想像していたよりも遥かに強かった。
 気遣いは無用とばかりにノロシ以上に強烈なエピソードを交えて私に語る。

「大丈夫じゃよ、ずっと行き来してる道なんじゃから。
こないだも時計を合わせるために『時報』を聞きに山を下ったんじゃから。
かすみちゃんのお母さんに連絡する用事があるなら全然苦ではないさ」

――うん、お言葉に甘えて連絡をお願いしよう。

 時報を聞くためにわざわざ下山……お祖父ちゃんどんな体力をしてるの?