「引っ越す場所……遠いのかな?」

 カズちゃんの引っ越す先が『空気の良い山の奥』としか聞いていなかった私。
 手紙を出すにしても、会いに行くとしても具体的な場所を知らなければ話にならない。
 そう思ってカズちゃんに聞いてみる。

「えーと、まだ細かい住所とかは分からないんだけど――」

 カズちゃんがそう答えかけた時。
 背後から声がかかった。

「かずやーっ! 準備できたの?」

 声の主はカズちゃんのお母さんだった。
 玄関から出てきたお母さんと目が合いペコリと頭を下げて会釈する。