無言のまま五分も悩んだ頃だろうか。
 隼人くんが声をかけてきた。

(悩んでるか?)

 隼人くんの優しい口調に無言のまま小さく頷く私。

(そりゃあ自分とキスするのは……嫌だろうなぁ)

「……それもあるけど……初めてなの」

 悩みの内容を隼人くんに素直に打ち明ける。
 普段ならバカにされそうだけど、今なら大丈夫な気がした。

(その……さ。キスと思わなけりゃ良いんじゃないか?)

 言葉を濁すように隼人くんが続ける。

(人工呼吸だと思えよ……無理かもしれないけど。)

 私と真里のことを隼人くんも考えてくれている。
 そんな気持ちが伝わってくる。

――そんな隼人くんの気持ちが私の背中を押してくれた。