そんなどうでもいい事を考えながら、俺は始業式を終えた後の教室で机に頬杖をつきながら、一人、外を眺めていた。

この不景気でなければ、俺はこの学校に来なかっただろう。

それどころか、高校にすら上がっていなかったに違いない。

別に高校に進学したからと言って、社会に適応出来るとは限らないし、そこに至るまでに必要な知識と教養が身に付く訳でもない。

学歴がいいから、と言ってインテリ気取りの馬鹿を一人だけみた事があったのだが、その男は「自分に合った会社があるはずだ」と言って結局会社をあっという間に辞めてしまっている。

今は、親の脛をかじっている状態だ。

何とも情けない。自分に合った会社を見つけるくらいなら、自分に合った会社を作ればいいだけの話だ。それも出来ないようでは、そいつの格など知れている。

まぁ、そいつは俺の親戚の一人なので、余り公言はしていないが。

三十も近いというのに、職がない状態というのはいかがなものなのだろうか?

しかも、自分のわがままで。

やめよう。こんな事を考えるのは。自分が卑屈になってしまう。

溜息を吐くと、俺は鞄の中に常備している本を開く。

これが俺の唯一の趣味だ。

読むジャンルはまちまち。時代小説は、少々肩がこるのであまり読まない。最近は神曲などを読んでいる。勿論、ライトノベルにも手を出している。

だが、書籍化されたケータイ小説は基本的に絶対に読まない。読むことはない、と言っていいだろう。

ケータイ小説は、ケータイで見るからこそ意味があるのだ。それに、さまざまな本を見回したのなら、必ず気づくはずだ。

文章レベルが、低すぎる。

内容はいいのかも知れないが、余りにも陳腐な表現。子供らしい文章。そして、異常なまでの純愛主義。