―翌日―


和華の親戚の会社に着き、依頼主を交えて春樹さんが今日の段取りを説明していた。

先週、偶然再会し、少し離れた場所に座っていた和華は居ない。


『ごめんね』


夕べは一晩中、和華の泣き濡れた声が頭から離れず、まともに眠る事すら出来なかった。



「では菊池さん、本日もよろしくお願いします」

春樹さんの一言で、事務所を後にするいつもの光景。

ドアの手前で振り返り、和華の叔父さんに聞いてみた。


「あ…あの、今日、和華さんは?」

「和華?和華の知り合いか?」

「はい。高校の同級生です…」

「そうなのか!和華なら『午後から来る』って言ってたぞ?」

「そうですか…。葬儀屋探すの大変そうだもんな…」

「葬儀屋?」

「昨日電話で聞いたんすよ。『高校の時から飼ってた犬が死んだ』って」

「犬?アイツが中学の時から飼ってるのは猫だぞ?ピンピンしてるからあと10年は生きそうだなぁ…。まぁ、葬儀屋とは無縁の猫だよ」

「―!?― そ、そうっすか…。すいません。足止めしちゃって…。今日もよろしくお願いします」


叔父さんに軽くお辞儀をし、ドアの向こう側で立っている春樹さんと瞬さんの元に駆け出した。