「高宮さんの家ってどこ?
良かったら俺の車で送ろうか?」


靴を履き替えるため、自分のロッカーに向かっていると今まで意図的に意識の枠から締め出していた男・西遠寺恭也が話し掛けてきた。


一応、肩書きの上では私のパートナーに違いないが、馴れ馴れしいことこの上ない。

会議の後、一旦教室に戻ってからここに至るまでずっと隣を歩いてついて来たことすらおこがましいのに。


家はどこか、ですって?


ほぼ初対面に等しい赤の他人の男に、自分の家を教える女がどこにいると言うの?


いるとしたらそれは正真正銘の痴女ね。

脳味噌が腐ってるんじゃないかしら。


そんな低俗なモノと一緒にしないで頂きたいわ。



『せっかくだけど、遠慮しておくわ』


目を合わせることすら煩わしくて。


育ちの良さそうに見える男にどこか得体の知れなさを感じつつも、相手の顔を見ることなく、脱いだ上履きをロッカーに収める。



――と。


収めた上履きの代わりのローファーに手を伸ばした瞬間、傍の男の雰囲気ががらりと変わったのが分かった。