――ガンッ。


靴を取ろうとしていた高宮の手首を掴んで無理やり身体の向きを変えさせ、一気に間合いを詰める。


掴んだ腕はそのまま、もう片方の手はロッカーについて囲い込む。



ぶつかった視線からは驚愕の意が感じられた。

お高く留まっている高宮春菜といえど、突然のことに驚いたのだろう。

人間、不測の事態には弱いものだ。


だが、高宮はすぐに見開いた目を細めた。



「……何のつもり?」


息がかかるほど近くにいるというのに、全く動じていない。

温度の感じられない声だった。



『俺、高宮さんと仲良くなりたいな』



気に入らない。

その冷めた視線が気に入らない。

一部たりとも朱に染まっていない頬が気に入らない。

拒絶するように閉じられた唇が気に入らない。



染めてやるよ、俺色に。

――こじ開けてやる。