思い通りに事が運んで気を良くした俺は、後ろを振り返って言い放った。


『高宮さん、書いて?』


先程のアレを見られていたことは背中に感じた視線で分かっていた。



もう落ちちゃったとか言わねぇよな?



俺に声を掛けられて慌てて黒板にアホ女の名を綴る高宮の姿を見ながら思う。


せっかく久々に愉しめそうだと思ったのに、案外つまらない女だったな。

所詮、女は皆同じってか?

このままダラダラつまらないゲームを続けても仕方がないし、さっさと完璧に落として終わりに……っ!?


そこで俺は一旦思考を停止させた。

只ならぬ気配を感じる。


静かにチョークを置き、こちらを向いた高宮。

たった今、つまらぬ女と称した女は、今まで出会ったどの女にも感じたことのない気を発している。


努めて押し殺されてはいる。

聡い人間でなければ気付かないだろう。

しかし、その手の類まれな感覚を生まれ持つ俺は、殺気とも取れる禍々しい気配を敏感に感じ取っていた。


フン、面白いじゃん。


俺は口の端を微かに歪めて笑った。