加納欄の誘拐 シリーズ21

「署長に掛け合ったって、2億なんて大金だしてもらえませんからね」

「だからって、犯人に知られたら、課長の命が危ないじゃないですか」

「大丈夫ですって。いっつもこれでやってますから」

「でも」

「苫利先輩が、捕まった時は、これで事件解決ですよ。その時の、この提案、課長ですから、今回は、自分が捕まったんですから、わかってると思いますよ」

言いながら、あたしは、物凄い勢いで、裁断をすすめる。

前回使った、偽札は、犯人逮捕時に風に飛ばされ、白い紙切れが大空を舞い、工事現場の人達の白い目線にたえながら、回収したのだ。

でも、あまりにも汚れてしまったので、全てメモ用紙に、再利用されたのだった。

「手伝うよ」

園田さんは、納得したのか、してないのか、わからなかったけど、裁断した用紙を束ねてくれた。

ある程度の重さになり、あたし達は、作業をやめた。

あたし達が戻ると、大山先輩の声が聞こえてきた。

「てめぇ!ふざけんなよ!」

「フザケテルワケナイデショ。オ金モラウノニ、大山サンガ、運ンデクレレバイイダケダヨ。帝都ホテルノ前ノ公衆電話ニ、30分後、次ノ指示ダスヨ。取レナカッタラ、取引不成立ダカラネ。大山サン1人デ、頑張ッテヨ。周リニゾロゾロ警官連レテキタラ取引シナイカラネ、ジャ、頑張ッテ」

犯人と話しているらしかった。

あたしは、高遠先輩に声をかけた。

「何かあったんですか?」

「仁に、金を運べって、言ってきたんだよ」


え?


大山先輩?


「しかも名指しだ」


名指しって。


「犯人が、大山先輩を知ってるって、こと、ですか?!」

「可能性は、あるな」

「欄、金出来たか!話してる暇はねぇ、とりあえず、30分後に、帝都ホテルだ。後は、無線で連絡する」

大山先輩は、そういうと、バックを受け取り、覆面車に乗って、南署を出ていった。

「吉井さん後追ってください」

高遠先輩に言われて、吉井さんも大山先輩の後を追った。

「高遠先輩、私は?」

あたしは、高遠先輩に聞いた。

「……お前の出番は、まだだ」

「…………」

他にも何名かの警官が、吉井さんと一緒に、南署を出ていった。