加納欄の誘拐 シリーズ21

「保住に会えなかったのは、残念でしたねぇ。直接揺さぶりかけてもよかったんですけどねぇ」

あたしは、ビルから出て、感想をのべながら、覆面車を待機させてある所まで、歩いていた。

道を曲がれば、覆面車があった。

その時、あたし達の背後から勢いよく突進してくる車がいた。

あたし達は気づかずに歩いていた。

「欄!後ろ!!」

叫び声が聞こえて、園田さんは、振り向きとっさに塀に飛び込み、全身強打した。

あたしは、聞き覚えのある声に、その場でジャンプし、宙で1回転して、スタッと膝をついて着地した。

勢いよく突っ込んできた車は、あたしが宙返りをしている下を勢いよく走り過ぎ、道を曲がることも出来ず、塀にそのままぶつかって止まった。

あたしは、声のしたほうへ顔を向けると。

「大山先輩、どうしてここにいるんですか?」

と、顔色一つ変えずに、質問した。

「犯人に呼び出されたんだよ、お前なぁ、なにやってんだよ。絶対殺そうとしてたぞ、今の車」

大山先輩は、車から降りることなく、話しかけてきた。

「まだ、追いかけっこしてるんですね」

「あぁ。コロコロといろんな場所に移動させやがるぜ……あっちは大丈夫か?」

と言って、さりげなく、園田さんに、目線をうつした。

どこで犯人が見てるかわからないから、ある程度の距離をもって話していた。

大山先輩に言われて、園田さんのことを思い出した。

慌てて、園田さんの側へ駆け寄った。

「おっと、犯人から連絡だ。じゃあな、早く調べろよ」

そう言って、大山先輩は、犯人から連絡がかかってきた携帯にでた。

「大丈夫ですか?園田さん」

園田さんは、顔面から突っ込んだらしく、顔面擦り傷だらけだった。

「あ、いや、大丈夫だよ。加納さん、は?」

痛そうに、顔を引き攣らせながら、園田さんは、答えた。

「私は、大丈夫ですよ」

「とっさ過ぎて、何がなんだか、どうやって助かったのか、よく、覚えて、ないよ、アハハ」

そう言って、右手をかばいながら、立ち上がった。

「犯人は?」

「まだ、車から出てきてませんよ。今から、確認しに行くところです。園田さんは、待っててください」