「オハヨーございますぅっっっ。課長まだ来てないですか?ラッキー!セーフ」

あたしは、寝坊したせいで、ギリギリに署内に入った。

「珍しいね、欄君が遅刻なんて」

吉井さんに言われて、あたしは、ソッコー訂正をした。

「遅刻じゃないですよ!間に合ったんですから!」

吉井さんは、わかったわかったと、両手を胸の辺りにあげて、うるさい小蝿でも払うかのような仕草をして消えて行った。

「課長まだ来てないんですか?」

園田さんの一言で、近くにいたあたし達は、課長のデスクを見たが、特に気にもとめなかった。

「朝の会議が長引いてるんじゃないのか?」

鮎川さんも、気にしていなかった。

「うぃ〜っす。頭いてぇ、欄、薬くれ」

あたしより、更に遅れて出勤してきた、高遠先輩が、二日酔い丸出しで、出勤してきた。

あたしは、バックから薬を取り出すと、お水と、濃いめのブラックコーヒーを持ってった。

「サンキュー」

「コーヒーで、薬飲んじゃダメですよ」

片手に薬、片手にコーヒーを持った、高遠先輩に、釘をさした。

高遠先輩は、コーヒーを、そっと置くと、水を口にふくんで、薬を飲み込んだ。

「仁は?」

「あそこのソファーで、まだ寝てますよ」

高遠先輩に聞かれ、あたしは答えた。

大山先輩と、別れて、約一月が絶とうとしていた。

あたしと大山先輩の間で、1度だけ、話し合いらしき時間を作ったけど、あたしが。

「だって、あたしと大山先輩、元々付き合ってなかったじゃないですか。あたしからも、大山先輩からも、付き合ってって、言ってなかったじゃないですか。付き合ってもないのに、1人でイライラして、馬鹿みたいですよね、疲れちゃうから、大山先輩のこと、好きでいるのやめたんです」

と、一方的にしゃべり、さっさと喫茶店から、逃げ出したのだった。

それ以来、大山先輩からは、その事について、何もなかったかのような振る舞いを、お互いにしていた。

祥子さんも、高遠先輩も、特に何も言って来なかった。

ただ、署内の女性警官が、大山先輩を飲みに誘ってるのを、目にしたことは何回か見かけた。

特に、気にもかけなかったが、その日の宿直を代わってあげることは、なかった。