俺が近くに行くと、いつも花穂里は腕に抱きついてくる。

そして、そのギュッとしたまま彼女は歩き始めるんだ。



「……♪」

「なぁ?そんなに幸せか??」

「もっちろん!!」

「……そ」



これ以上言うと、今すぐにでもポーカーフェイスが崩れそう。

今はまだ学校内。
すぐにでも学校を出なければ…。


俺がちょっと速く歩いたら、花穂里が抱きついてる腕の締めが、若干強くなった。


下を見れば、目に涙を浮かべている花穂里。



「…どうした?花穂里??」

「……っ…」



…まずい。
何かが起こる気がする。
とりあえず学校を出なければ。


俺は彼女の耳元に口を近づけると、低く、甘い声で囁いた。



「花穂里?あとで話は聞くから。学校を出るまで我慢してろよ?…な?」

「うん……っ」



小さく頷く彼女に、俺は歩くスピードを速めた。