「最後に帰った客は一時頃ですよね。」

幸太郎は手帳を開いて聞いた。

「ああ、その時には宮川はまだ店にいなかったそうだよ。」

秋月がそう答えると幸太郎は手帳を閉じて思いついた。

「その最後の客が嘘言っているんじゃないですか?

宮川はもうその時店にいて、隙をついて室井を刺し、宮川も手にかけた。そして、宮川とともに店から消えた。」

秋月は呆れ顔で幸太郎を見て、

「よく本庁上がれたもんだな。マル秘資料見てないのか。最後の客は本庁の捜査二課長だよ。」

秋月の言葉に、恵理が言った『爆弾』の意味を理解し、言葉を失くした。

そう最後の客は警視庁捜査二課長の宗田純一朗警視正であった。

スナック「シャングリラ」の店員吉村純の証言で判明したことで、この事実は公表されていない。

吉村と宗田二人でこの店を出たということだった。

宗田は小島の後輩で、本来出世コースの捜査二課長を小島が就任する筈であったが、

ある警察官僚ОBの政治家の怒りを買った為、宗田が就任したのだ。

呆然とする幸太郎を我に帰したのは恵理の一言であった。

「帰るわよ。」

ただ一言を残し、店から出る恵理の横顔はまるで別人の様に冷たいものだった。

我に帰った幸太郎と秋月は恵理の後を追った。

本部に戻る車中、一切恵理は言葉を発しなかった。

幸太郎の問いにも答えず、ただ冷たい表情のままであった。

運転する秋月はその恵理の姿を見て、不思議な感覚にとらわれていた。

…彼女は何をあそこで見たんだろう…

本部では恵理の報告を小島が待っていた。

待っていた小島に恵理がプロファイリングの結果を伝えた。

「犯人は三十代女性…」

その恵理の言葉に本部内はざわめいた。女性の犯行というプロファイリングを誰も想像していなかった。

To be continued