「……んだよ、お前ら」
聞こえるか聞こえないかぐらいの小さい声に、実由の体は一瞬にして反応した。
圭斗も聞こえていたのか、その声に振り返る。
そこにいたのは、
圭斗だった。
「授業サボって遊んでんの?」
圭斗が慎吾に挑発的な声でそう言う。
慎吾は、フッと笑み、すぐに圭斗に言い返す。
「そっちこそ、授業サボって何しにきたの?実由チャンなら、返さないよ」
「黙れ。小高、お前……」
「馴れ馴れしく名前呼ばないでくれねぇ?ウザイんだよ」
慎吾は言い返してきた圭斗に叫んだ。
場の空気が一気に暗くなる。
「実由、帰んぞ」
圭斗がそう言った。
実由は、二人の言い合いが怖くて、足が竦んでしまった。
「お前さあ、分かんねーの?実由のこと……」
「は?お前には分かんのかよ」
「分かるね。俺は、お前とは違う」
「あ、そ。関係ねーだろ」
パシッと圭斗に手を取られ、実由は引っ張られながらその場を後にした。
ちら、と後ろを振り返ると、慎吾が笑顔で手を振っていた。
でも……目は笑っていなかった。

