乱暴に玄関の扉を閉めて中に入ると、リビングから兄貴が顔をのぞかせた。

「よお。おかえり~」

「……何でいんの?」


兄貴はマンションで一人暮らしをしている。
あまり実家には帰ってこないが、たまにひょっこりこうして現れる。


「おいおい、どうした。今日はまた一段と機嫌悪いね~。その仏頂面、恐ぇよ」

兄貴の言葉を無視しながらキッチンに向かい、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一気に飲み干した。


「あー…腹が立つ…」

ペットボトルをグシャッと握りつぶしながら呟くと、兄貴がこちらに近づいて来た。


「その眉間のシワとどす黒いオーラ、何とかしろよ。いい男が台無しだぜ?」

「……うるせえ」

「あらら。和泉ちゃん、ご機嫌ななめだね~」


……和泉ちゃん言うな。

しかし、そんなことを言い返す気にもなれず、はあぁ、と深いため息を吐きながらソファーにドカッと座り込んだ。