「ったく辛気くせぇな。ところでさ、最近モカちゃん連れてこねえの?」

「……るせぇよ…」


このタイミングでモカのこと聞くなよ…。

そんな俺の心情を見事に察した兄貴は、「おっ、喧嘩でもしたか?」と興味深そうに聞いてきた。


喧嘩の方がまだいい…。


「しんどいって…」

「は?和泉?」

「普通って何だよ…」

独り言のように呟く俺を兄貴は「何が?」と不思議そうに聞いてくるけど、それに答えることもできない。


俺と一緒にいると、モカはいつもそんなことを思っていたのか…。

まるで、俺と付き合ったことを後悔してるかのように、俺じゃない男を選べば良かったかのようなモカの言葉にショックを隠し切れない。

マジで…立ち直れね…


こんな調子じゃ、モカが俺から離れていくのは時間の問題なんじゃねぇか…?


どんよりと負のオーラを放つ俺に兄貴は関わるのはやめたようで、「ま、元気だせ」と軽々しく言ってさっさとリビングから出て行った。



……これから俺はどうすればいいんだろうか。

どうすればモカの心をつなぎ止めておけるだろうか。


答えが出ないまま、ぐるぐるとその問いが頭を巡っていた。