「そうか…」

それに応えたのは、洋太だった。彼にしてみればそれが望みだったはずなのに、彼の表情は辛く苦しそうだった。

「サヨナラの意味を…」

圭一がしゃべりだす。

「俺はあの時、サヨナラの意味を全く解ろうとしなかった」

ひと呼吸ごとに、頭が深くもたげていくようで、重たそうな身体を圭一は必死に抱えていた。

「俺は、その言葉こそ大事にするべきだったんじゃないか?」

誰に発っせられたか?その質問は空気中に散らばるとシャボン玉のように弾けて消えてしまう。

「結衣の最後の言葉を…」

今度は言葉を飲み込むようにしゃべりだすと、圭一はそのまま肩を震わせていた。

「サヨナラの意味を……」

圭一の心がまた悲しみに転がり出すと、菜緒もまたその悲しみに触れていた。

”サヨナラの意味…”

もう二度と会えない人とするサヨナラ。そんな限界を超えた悲しみに触れると、菜緒の気持ちは更に共振する。