自分はいったい何がしたいのか?

菜緒は、まったく混乱していた。

自分が好きになった男は、恋人を亡くしてしまっていた。

そして今でも絶望的にその女性を愛し続けている。

そのひたすら過ぎる想いは、きっと何処にも行き場所を持っていない。

頑ななまでに、幻をかかえ続ける男を好きになってしまった自分は、何をとっても厄介だ。

しかし菜緒にしてみれば、そんな圭一の気持ちにこそ触れたくもあった。

その闇に飛び込む事こそしたかったのだ。

菜緒は、反射的に圭一の想いを肯定した。きっとそんな想いは、その先にしか行き場所が無い事を瞬間的に察知した。

そして、そんな事を泣いて叫んだ。

気がついたら圭一はうずくまっていた。呼び掛けても返事が無く、まるで眠ってしまったかのように動かなくなった。

「圭一?」

「ゆ…い…」

洋太の呼び掛けにかろうじて圭一はそう答えた。