気付いたら圭一は電車に乗っていた。

午後の低い日差しが、閑散とした車内のスミズミまで垂れ込める。

ガラガラの長椅子の1番端に腰掛けて圭一は眠っていたのか?その雰囲気だけは掴めても全体の像は把握出来ないでいた。

「結衣…」

きっと隣にいる。圭一はそれがわかって呼び掛けた。

深い眠りの底にいるからか、浅い眠りが心地いいからか、圭一は目を開ける事が出来なかった。

「結衣…」

結衣は微笑みかけているだろう。

目で見なくても隣にいるだけで、その体温だけでそれがわかった。

その体温は圭一の心を優しくみたす。

その温かさを湛えたまま圭一は眠り続ける。

午後の日差し。シートの温もり。結衣の体温。

その全てが圭一を包み込む。

深い眠りへ…。

圭一は転がるように意識の底に落ちていった。

たどり着いたそこは、また暗闇だった。