言葉には奥行きみたいなものがあって、表面上の意味とは違う形を胸の中に届ける事がある。

”結衣が死んだ”

その言葉はどうやっても掴みドコロがない液体のように絡みついた。

いつからか、圭一は闇の中。

空間のそれを捕らえきれずにフワフワと浮かんでいるようだった。

気味悪く沈黙を続ける洋太はいつの間にかどこかに行ってしまった。

うるさいくらいに喚き泣いていた菜緒もどこかに行ってしまった。

闇は膨脹を続けて、部屋を町を、いつかは世界も包み込む。

「結衣…」

誰もいなくなった闇の中で圭一は呼び掛ける。

今、ここには誰もいない。

ひとりぼっちの闇の中で圭一は結衣を探している。

「結衣…。結衣…」

まるでつぶやくように、圭一は結衣の名前を呼び続けた。

暗闇は、それこそが暗闇だとでもいいたげに黒に黒を塗り重ねる。

「ゆ…い…」

やがてこぼれる位にしか声が出なくなった。それでも圭一は結衣を呼ぶ。