「波多野君のそばに結衣さんはいるんでしょ?ずっとそばにいるんでしょ?」

指先から血の気が引いて行くのを感じながら菜緒は言った。

「波多野君はそうしたいんでしょ?」

そんな言葉と一緒に溢れ出したのは涙だった。それでも菜緒はしゃべり続ける。

「ずっと離れないって約束したんでしょ?そう誓ったんでしょ?」

「神木さん!やめろよ!」

洋太に言われて菜緒はニラミ返した。

「何で?何でやめなきゃいけないの?」

「圭一が。戻れなくなる!」

「いいじゃない!波多野君は結衣さんが必要なんだよ?!」

「でも、結衣ちゃんはもう…!」

「それでも!そう思うならそうするべきだよ!」

「神木さん…。何言ってるかわかってんのか?」

洋太の言うとおり、何もわかってないのは自分なのかもしれない。

目の前の悲しみに耐えられなくて、こんな事、喚き散らしているのかもしれない。

ただ菜緒にとっては、それこそが1番大事な事だった。