圭一は、菜緒の声で我に帰ったように振り向いた。

「結衣が死んだ?あの事故で?」

思い出した様に洋太をニラミつける。洋太は黙ってその視線を受け止めた。

「何でそんな事を言うんだ?なんなんだ?お前は?」

「何言ってるんだ?俺はお前の事を思って言ってるんだ」

「俺の為?ばかな事言うな。俺から結衣を奪ってどうするつもりだ」

「だから言ってるだろ!結衣ちゃんは死んだんだ!いつまで自分を縛るつもりなんだ!」

「もうやめようよ…。」

菜緒は堪らなくなって分け入った。

もう傷ついた人を更に傷つけるのを見ていられない。

「やめないよ神木さん。これ以上ほっといたら圭一はもう帰って来れない」

「でも…」

それでも菜緒は耐えられない。圭一が傷つくのを見ている事が。

「波多野君…。波多野君は結衣さんが必要なんでしょ?」

「神木さん!」

洋太が止めるのを聞かずに、菜緒は圭一に話し続けた。