”なんでこうなってしまったんだろう?”

菜緒はここまできたイキサツというか経緯を考えていた。

自分が目にするはずの光景は、もっと絶望的なはずだった。

”現実”という物を”目の当たり”にする事で、わがままに事態を収束させようとしていたのだ。

しかしながら、目の前で”現実”は、違う形にすり替えられて、沈黙のなかでその場に落ち着こうとモゴモゴうごめいている。

いわゆる”現実”は、「これがそうだよ」と目の前に出されたら受け入れるのはこっちのほうで、それ自体は形を変えないものだと思っていた。

しかし目の前で起きている事態はそうではない。

今、自分達の目の前で”現実”は元の形を忘れてしまったみたいに、ぐにゃぐにゃと形を変えている。

「結衣は…。結衣が…」

しゃべり出した圭一は、目の焦点が合っておらず、その言葉もうわごとの様に頼りない。

「結衣ちゃんは…」

洋太にもう迷いは無いようだ。

”現実”がケモノの様に暴れだす。