”波多野君だ…”

神木菜緒は、声のするほうに視線を向けた。

視線の先には、思ったとおり圭一がいた。

菜緒は、入学してから半年以上こうして圭一の事を視線で追っている。

別に話した事があるわけでもないが、なぜか圭一に心惹かれていた。

「で、どうするの?」

圭一の友人である、天野洋太が尋ねている。

「別に、どうもしねえよ」

「だって、わざわざ圭一の携帯調べて連絡してきたんだろ?」

「だからって」

菜緒は内心穏やかではない。

”女の子の話?”

菜緒が聞く圭一の噂は、だいたいこんなもんだった。

次から次へ、女の子を取っ替え引っ替え。

しかも、ちゃんと本命の彼女がいるらしい。

「飯ぐらい食ってあげれば」

「飯ぐらいかあ」

「熱くならないんだろ?」

「まあ」

友達もなんでそんなにそそのかすのか?

菜緒は、黙って聞き耳をたてていた。