「俺は決めたんだ!結衣と生きていく事を!」

「それが、おかしな事なんだよ!そんなに背負い込む事ないだろ!?」

「背負い込んでなんか…!」

そんなつもりはない。これは自分が望んだ事だ。それに、自分には結衣を失う事の方がよっぽど辛い。

「お前は、あの事故で沢山の物を失ったんだ。それを認める事が出来ないだけなんだ」

「そんなの知ってる!だから何度も言っている!」

自分はゼロから始めるのだと。結衣と一緒に歩くのだと。

洋太は悲しみを湛えた顔で圭一を見ている。宙空を見上げて大きく息を吸い込むとポツリと呟いた。

「入るぞ」

言ったと思うと、洋太は圭一が立っている脇を抜けて、スッと部屋の中に入った。

「待てよ!」

一瞬の事で止める事も出来ず、圭一は置き去りにされた形で振り返った。

背中に菜緒の存在を感じながら、圭一は洋太の後を追った。