「お前が無くした物を何だと思っているかは知らない。けど、これはお前が落としたスケッチブックだ」

洋太はひたすらまくし立てるが、圭一は言われている事がよく判らないでいた。

自分が無くしたのは結衣のキャンバスだ。おそらく結衣が捨てた。それを捨てた事で結衣も自分も前に進む事が出来たのだ。

しかし、洋太はそれを自分が落としたと言っている。

「それ、俺のじゃない。俺は知らない」

「中にお前の描いた絵がある。間違いなくお前のだ」

「俺は絵を描かない。描くのは結衣だ」

「描いたのはお前だ。絵を描く事が出来なくなった結衣ちゃんの代わりに」

圭一は、益々混乱した。自分が絵を描くはずがない。なのに洋太は何を言っているのか?

「洋太?どうしたんだよ?言ってる事がおかしいぞ?」

洋太はイラついたような顔をして小さく息をついた。

「俺は、おかしな事なんて何も言っていない」